2008年2月

四旬節にめざすこと
齋藤紳二助祭

最近、急に思い立って、遠藤周作さんのふたつの作品『イエスの生涯』と『キリストの誕生』を30年ぶりに読み返してみました。

初めて読んだころは私も若かったので、「イエス・キリストが神の子であった」という認識を一切切り捨てて、あくまでも人間イエスとしてとらえようとする遠藤さんの姿勢に、かなり反発を感じました。
その結果、ふたつの作品がどんな内容だったかまったく記憶に残りませんでした。

70歳を間近に控えた今、遠藤さんが書きたいと切望していたことが分かるような気がします。それは、
イエスが神であることを認められなくても、少なくとも「偉大な人」であったことを理解して欲しいということです。
キリスト教の信仰が理解できなくても、キリスト教を否定する考えをもっていても、「この人の素晴らしさは否定できないでしょう」と叫んでいる遠藤さんが見えてきます。

この2冊の本で、遠藤さんがもっとも重きをおいているイエスのみことばは、十字架上での祈りです。
「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです。」
どんな人であれ、この祈りに示されているイエスの愛を理解できないはずはない、と遠藤さんは強調しています。

2月6日から私たちは復活祭の準備期間「四旬節」に入ります。
この期間、司祭が着用する祭服を初めとした典礼色は、回心を表現する紫色が用いられます。
どのような回心でしょうか?

イエスの生涯とその死、復活によって証しされた神の無限の愛をつい忘れがちな私たちの心に、感謝と賛美をもう一度刻みつけること……
それこそ四旬節の私たちの目標と言ってもよいのではないでしょうか?

教会報 2008年2月号 巻頭言

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