2014年10月

神との出会いの原点
吉川孝政神父

9月22日から26日まで、中軽井沢の宣教クララ修道会で、さいたま教区と新潟教区合同の黙想会がありました。講師はカルメル修道会の中川博道神父様。その講話の中で心に残ったことばは、「神との出会いの原点に立ち戻る」ということでした。

皆さんにとって「神との出会いの原点」とは何でしょうか。教会に初めて来たときかもしれませんし、洗礼のときかもしれません。人それぞれで、もちろん1つだけじゃないかもしれません。わたしが黙想会の間、心に留まっていたことは、自分が召命の道を見失いそうになったときの出来事です。

神父になる前、ずっと以前に修道会の志願者として働いていた児童養護施設を訪れました。中学生だったある男の子が、高校2年なっていて、突然、わたしに「吉川さん、元気? 必ず神父さんになってくれよ!」と言ったのです。私の表情があまり良くなかったのでしょう。苦手で手に負えない子だったのが、こうして心配してくれて声を掛けてくれた。その時、見失いかけた希望がよみがえり、また夢に向かって歩むことになりました。その時の彼の言葉を通して、神と出会い、神の声を聴いた気がします。今も、あの時の言葉の感謝を伝えたいのですが、彼はいま、どこにいるのか分かりません。

神との出会いは、日々の生活の、何気ない出会いや出来事の中に隠されているのではないでしょうか。いま、月に1回、ある児童養護施設に行ってボランティアをしています。小学生のグループと一緒に食事をしたり、テレビを見たり…。その子たちは反抗期で、行くと「来るな!」と言われ、帰るころには「また来てね!」と言う。何もできないけれど、「ともにいる」というわたしのテーマにつながる関わりです。その子どもたちの声に出せない不安、辛さを前に、ただ一緒にいるだけですが、神と出会わせてくれたあの言葉への感謝をこめて、共に時を過ごしています。

教会報 2014年10月号 巻頭言

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