2020年11月

ゆるされて生きる
御前(みさき)ザビエル

ずいぶん前のことですが、1990年に公開された「フラットライナーズ」というアメリカ映画を見たことがあります。
医大生のネルソンは死後の世界に強い興味を持ち、同じ医大生4人を誘ってある実験を計画します。
それは人工的に心臓を停止させ、1分後に蘇生(そせい)させることで、実際に臨死体験をするという危険なものでした。
その実験のもたらしたものは何だったのでしょうか。

死後の世界の素晴らしい光景が見られると思っていたメンバーはわずかな時間で死んだ状態になったとき、何を見たかというと、それぞれの過去において、犯した罪の場面を見せられました。
交通事故を起こしたり、女性をだましたり、学校で同級生をいじめたり、過去の自分たちの重大な罪に出会いました。
迷惑を被った相手と再会して、やっと心を解放してくれるゆるしをいただくシーンで終わります。
ホラー映画なようでいて、実は救いを描いた、感銘を受けた映画でした。

わたしたちキリスト者は、臨終を待たずに、いつでも罪のゆるしをいただけることはとてもありがたいことです。
一昔前は、「告解の秘跡」と呼ばれていました。
すなわち、自分の犯した罪を、司祭を通して、神に告白すれば、その罪が解かれるという意味合いのことばだったと思われます。
今は、「ゆるしの秘跡」と呼ばれるようになりました。
表現の変更を吟味すれば、ゆるしの秘跡の本質を理解することができます。
ゆるしの秘跡は、自分の犯した罪を中心に告白するというよりは、根本的に神のいつくしみとあわれみを「告白」するものです。
この秘跡の中心は、やはり神のいつくしみ、あわれみ、ゆるしです。

罪びとであるわたしたちに対して、神の思いは、 子どもが怠け者で勉強をおろそかにしていることなどでがっかりする親たちの思いとは違います。
神は、 わたしたちの罪を見つめるのではなく、罪によって苦しんでいるわたしたちをいつくしみの眼差しで見つめてくださいます。
知恵の書11章23節にあるように、「全能のゆえに、 あなたはすべての人をあわれみ、 回心させようとして、 人々の罪を見過ごされる。 あなたは存在するものすべてを愛し、 お造りなったものを何一つ嫌われない」。
ゆるしの秘跡は、罪を見ようとせず、罪びとをゆるそうとする神との出会いであリ、神の驚くべきあわれみを賛美と感謝する祈りの場です。

秘跡に与る準備として、先に犯した罪を思い起すよりは、まず神の寛容なゆるしに目覚めるように祈ります。
神の息吹である聖霊の光を求めて、回心を呼びかけておられる神に素直に心が開かれるよう、またイエスのゆるしを真心で信じ、望むように祈ります。

そして、神のいつくしみとあわれみ、またイエスのいやしとゆるしを示す神のことばを選んで、ゆっくり読みながら味わいます。
みことばの光によって、自分の犯した罪が明るみに出ます。
もし、自分がとくに罪を犯していないと思うならば、より真剣に、みことばを読むことにします。
きっと自分の今まで気がついていなかった罪が明らかになるでしょう。

さらに、準備を進めて、読んだみことばの光をもって、神の目で自分を見るようにします。
生きておられる神の子イエスは、わたしを今、どのような目で見ておられるのでしょうか。
イエスの眼差しで、自分のありのままの姿、生き方、考え方などを糾明します。
自分の犯した罪については、自己嫌悪に陥らず、神に背いたこと、人を傷つけたことで、できる限り自分のうちに痛悔の心をもつようにし、また、神の恵みによって、回心して、償いも考えて、準備を進めます。

ゆるしの秘跡の与り方については、細かく書けませんが、聖堂の後ろに置いてある「ゆるしの秘跡の小ガイド」を参考にしてくだされば幸いです。

通常は個別にゆるしの秘跡を受けますが、共同回心式という形で受けることも勧められています。
ミサ以外の時に、聖堂で集まって、神のゆるしを賛美して歌い、回心を呼びかける神のことばを聞き、自分の生活を神のことばに照らして反省し、各自が罪の告白し、ゆるしを受けた後、一同は主イエスの十字架と復活によってゆるしを与えてくださった神に、共同体としてともに感謝をささげます。
共同回心式は、12月5日(土)14時より3人の司祭とともに行う予定です。
ぜひご参加ください。

こうして、よく準備して与るゆるしの秘跡は、計り知れない喜び、安らぎ、平和、より良く生きるための新たな力と希望を与えてくださいます。

教会報 2020年11月号 巻頭言

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