2020年12月

星が良く見えるのは夜である
御前(みさき)ザビエル

今年は、クリスマスと新年の祝いは揺らいでいます。
全世界を襲ってきたコロナウイルスの危機によって、日常生活の営みがかなり苦しくなっています。
今年1年をまとめることばがどういうものになるかは分かりませんが、不安、不況のようなことばが選ばれるでしょう。

これからどうなるかと胸を締め付けられるような不安を感じている人が多いことでしょう。
日本で頻発する地震にたとえれば、この危機はただの普通の地震なのか、それとも大地震の前触れなのか、誰も答えられません。

この危機が起こる前にも全世界の人々は、余裕を持って生活できていたわけではありません。
1日3食できず、安定した仕事もなく、健康保険の制度がないため薬さえも買えないつらい生活に追いやられている人がたくさんいました。
起こってしまったこのウイルスの攻撃によって、とても苦しみもだえている人々が増えています。
それは、町工場の赤字や倒産、リストラによる解雇や失業、就職の困難さ、底をつく貯え、移民労働者の切羽詰まった状況であり、将来に対する不安と絶望による苦しみなのです。
このような状況に置かれているうちに、人間としての尊厳が傷つけられ、自分に対する自信の喪失などでさらに苦しみが耐えがたくなります。
この厳しい現状を耐える力を身に付けるために、救い主の誕生を思い、希望をもちたいのです。

星がよく見えるのは夜です。暗闇が全世界を覆うときこそ、主イエスのご降誕による嬉しい光が見えてきます。
24日のクリスマスの夜半ミサで次のように祈ります。
「神は、神聖な夜をまことの光キリストによって照らしてくださいました」。
また、「闇の中を歩む民は、大いなる光を見た」と告げられるので、わたしたちにも、深い喜びと確かな慰めが与えられています。
神の愛と恵みをすべての人に分け与えるために、わたしたちの間にお生まれになった、 真の神であり、真の人である主イエスを喜び迎えて祝います。
神が望まれる人間の姿を啓示するために来られた御子(おんこ)は、不正を受けている人の仲間、病気や苦しみを乗り越えて希望をもとうとする人の共感者、罪や不信心を捨てて正しく生きようとする人のゆるしと支えです。

わたしたち一人ひとり、クリスマスの本当の意味をしっかりと受け止めましょう。
すべての人が信仰、希望、愛において豊かになるために、馬小屋で生まれ、貧しくなられた主に倣って、わたしたちも苦しんでいる人の声を聞き、痛みをともにし、自分の乏しさからでも助けの手を差し延べましょう。

こうしてご降誕を祝うわたしたちが、喜びのうちに一つになり、始まろうとする2021年に向かって、イエスに倣い、神からいただく賜物を他の人にも分け与えて生きることができますよう、お祈りをいたします。

教会報 2020年12月号 巻頭言

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