教会報の巻頭言

最後の訪問者
御前(みさき)ザビエル

ベツレヘムで「あの夜」が終わろうとしていたころでした。
夜明け前に、羊の世話をするため羊飼いたちは帰りました。
星の輝きが消えたときには、占星術の博士たちも、国に帰りました。
マリアは、みどりごのイエスがよく眠るように飼い葉桶に新鮮なワラを入れました。
しかし、クリスマスの夜に眠れるのでしょうか。

マリアが子守歌を歌い始めた時、足音がしました。
引きずるような足音。
どんどん近くになってきました。
そっと馬小屋の扉が開きました。
誰か人の手によってではなく、そよ風に開かれたような感じでした。
一人の老婆が入口に現れました。
ぼろぎれをまとって、とても年を取っていました。
口がしわの一つに見えるほどしわだらけで、土色の顔でした。
魔女にでも似た彼女を見たとき、マリアはびっくりしてドキドキしました。
幸いにもイエスはぐっすり寝ていました。
マリアは心配そうに老婆をじっと見つめていました。
彼女の一歩一歩が一世紀のように長く感じられました。

老婆は歩き続け、もうすぐ飼い葉桶のそばに来ようとしています。
神様のおかげで、イエスは眠り続けていました。
しかし、クリスマスの夜に眠れるのでしょうか。

突然みどりごのイエスは目を開けました。
マリアは、老婆の瞳の中にも、生まれたばかりのイエスの瞳の中にも、希望に満ちた同じ輝きがあることに驚きました。
老婆は、飼い葉桶の上にしゃがみこみ、ぼろぎれの中から物を探しはじめました。
マリアは、老婆が何を探しているのかと、この不思議な夜明けの訪問者の行動を見守っていました。
動物たちは、これから何が起こるか知っているらしく、落ち着いたまなざしで老婆を見つめていました。

とても長い時間が経ったあと、老婆はぼろぎれの中からやっと取り出した重そうな物をイエスに差し上げました。
羊飼いたちの美味しい牛乳とチーズ、博士たちの珍しい土産の後、この重そうな物はどういうプレゼントなのでしょう。
マリアはそれを見たいと思いましたが、その場所からは見えません。
見えていたのは、年をとって腰の曲がっている老婆の後ろ姿、しかもイエスの上にしゃがみこみ、さらに曲がっている背中だけでした。
動物たちは、そのプレゼントを見ていましたが、特に驚きはしませんでした。

老婆がイエスの上に体を傾けたまま、またとても長い時間が流れました。
イエスに重いプレゼントを渡したとたん、解放されたかのように、背中を真っすぐ延ばし、立ち上がりました。
頭は馬小屋のわらぶき屋根にぶつかるほどでした。
顔は奇跡にあったかのように、若い頃のすがすがしさに戻っていました。
老婆が飼い葉桶から離れて出口を通って夜明けの光の中を帰ろうとしたときに、マリアは不思議なプレゼントが何だったのかが分かりました。

エバ―間違いなく彼女であった―は、みどりごイエスに丸くて小さなリンゴ―最初の罪、またその後に続くたくさんの罪の―リンゴを差し上げたのでした。
みどりごのぽちゃぽちゃした手の中に、丸くて小さな赤いリンゴが輝いていました。
リンゴは、生まれて来てくださった救い主によって、新しく生まれ変わった地球のようでした。

あらためて、世界の人々に新しい希望といのちを与えてくださった主イエス・キリストのご降誕おめでとうございます。

教会報 2022年1月号 巻頭言

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