教会報の巻頭言

聖マルコ福音記者
中嶋 義晃 神父

マルコはマリアと呼ばれるその母とともに使徒たちの良き協力者でした。
マルコはペトロの説教を材料に福音書を書いて布教の効果を上げたり、パウロの布教伝道の手伝いをしたりしていました。
母マリアは迫害中にも使徒たちを自分の家にかくまって衣食住の世話をしていました。
「ペトロはこうと分かったので、マルコと呼ばれるヨハネの母マリアの家に行った」(使徒言行録12・12)。

マルコは、主キリストの時代にユダヤに生まれました。
幼児の頃、父と死別し、信心深い母マリアの手で育てられました。
その広い邸宅は、使徒たちやエルサレムの信者の集会所に当てられ、そこで祈りやミサ聖祭が行われていました。
42年、ペトロは天使によって奇跡的に牢獄から救い出されると、まっすぐこの家を訪ねましたが、出てきたお手伝いはペトロの声を聞くと喜びのあまりに戸を開けるのも忘れ、奥に駆け込んでそこに集まっていた信者たちにその由を知らせました。
はじめは皆、お手伝いの頭がおかしくなったのかと疑ったものの、ようやく戸を開けてペトロの姿を見ると、一同の喜びと安堵は尋常ではなかったそうです。

ここで分かるように、マルコの母マリアは、かなり裕福な女性でした。
その屋敷の2階にある大広間は、初代教会のーつの中心をなしていました。
まだ若年だったマルコは、キリストの使徒や弟子を初め、エルサレムの主だった信者たちに会い、ごく親しく彼らと交わっていたわけです。
マルコは、その頃まだ若かったのでキリストの使徒や弟子の列には加わらず、後になっておそらく、聖ペトロから洗礼を受けたものと思われます。
初代教会の偉大な人物バルナバのいとこであり、バルナバとともにパウロの旅行にも同伴し、ローマではパウロの、次いでペトロの協力者として働きました。
パウロの手紙にはマルコの名前が幾度も出てきます。

ところで、マルコ福音書は、翼をもったライオンで表されています。
これは、マルコ福音書の最初に、人々に悔い改めを叫ぶ洗礼者ヨハネが描かれているからです。
洗礼者ヨハネは荒れ野で生活していました。
荒れ野には、当時ライオンやジャッカルなどが住んでいたと言われています。

また、別の学者は、マルコ福音書が王であるキリストの威厳を伝えてくれるものだから、ライオンで表象するのだと言っています。
とにかく、絵に描かれたマルコを見てみると、本を書いているマルコの傍にライオンが描かれているものや、ペトロとともにいるマルコが描かれています。

67年、ローマ皇帝ネロの迫害でペトロとパウロが殉教したのち、彼はエジプトのアレキサンドリアへ行き最初の司教となり、そこで殉教したと伝えられています。
後年、その遺骸がヴェニスに運ばれ、市民の保護者となりました。
墓の上には大聖堂が建てられ、現在も美しい教会として有名です。

教会報 2024年4月号 巻頭言

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