2007年12月

昔々のプレゼント交換
齋藤紳二助祭

当時仙台市に住んでいた私は小学校5年生。
クラスメイトのW君とは本を読むのが好きなことから、大の親友になりました。
そのころ少年少女世界名作全集というシリーズが子供たちの間で大人気でした。
しかし、貧しい時代でしたから出版されるたびに買ってもらえるわけではありません。
W君と交互に買ってもらい、1冊の本を2人で読み、ストーリーや感想などを話し合うのを楽しみにしていまた。

シリーズの中で彼が一番好きなのが私の持ち物だった『トム・ソウヤーの冒険』で、私は彼の持つ『鉄仮面』が一番のお気に入りでした。
同じ本を何度も貸し合って、その度に新しい発見をしては報告しあったものです。

北風が吹き始めたころ、W君が引越すことになりました。
夜汽車に乗り込んだ彼の一家を見送りに行ったとき、『トム・ソウヤーの冒険』を餞別のつもりで窓から差し入れました。
すると彼は「あ、おらも」と言って『鉄仮面』を渡してくれたのです。
引越し荷物には入れないで、わざわざ持って来てくれたのでしょう。

列車を見送ってから何気なく本をめくると、「よいクリスマスをむかえてね」と書かれたカードがみつかりました。
その時、W君一家がクリスチャンだったことを思い出しました。
そして、クリスチャンだと「よいクリスマス」と「悪いクリスマス」があるんだな、プレゼントがもらえたら「よいクリスマス」になるのかな、などと考えたことを覚えています。

この思い出が今でもよみがえってくるのは、このときW君の心と私の心とが本当の意味で相手を思いやっていたからでしょう。
それ以後、これほど親しい友をもつことはなかったような気がします。

教会報 2007年12月号 巻頭言

Script logo