2008年11月

花嫁の工夫
齋藤紳二助祭

先日、結婚式に招かれました。

チャペル風の式場で無事に式が終わり、ガーデンで話に花がさいているのですが、決まりもののブーケ・トスがありません。
花嫁は立派なブーケをもっているのですが、それを大事そうに胸にかかえたままなのです。
変った式だな、と思いました。

その謎が間もなく解けました。披露宴の最中に、こんな趣向があきらかになったのです。
カップルで招かれた客の夫ばかり10名ほどが指名されました。
彼らがメインテーブルの周りに集まったところで、大きな箱が持ち出されました。
その中にさきほど花嫁が抱いていたブーケが入っているのです。
箱からは人数分のリボンが垂れ下がっています。
集められた夫たちがリボンを1本ずつつかみ、一斉に引っ張ります。
リボンのうちの1本にブーケが結びつけられていて、それを引き当てた人は自分の妻にプレゼントするというのです。

音楽の演出も巧みで、もりあがったムードのうちに、ひとりの男性が見事ブーケを獲得し、みんなの祝福のうちに、妻に差し出しました。
ひときわ大きな拍手が沸きました。

この趣向を考えたのは、新婦でした。
独身時代に友人の結婚式に出席したとき「ブーケ・トスをしますから『未婚の』女性は集まってください」と声がかかります。
進み出はするものの、いつも独身であることがさらけ出されたようでいやな気分だったそうです。
だから、ブーケ・トスだけはしたくないと決めていたとのこと。

私はその花嫁の配慮に感心しました。
独身の女性客に自分と同じ「いやな思い」をさせたくないと考えた彼女の配慮が素晴らしいと思ったからです。
自分たちが引き立つことに熱中しがちな新郎新婦が多い中で、他人を思いやる心遣いを見せたこの花嫁は、きっとよい妻、やさしい母になるだろう・・・・・・・そう思いました。

教会報 2008年11月号 巻頭言

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