2010年6月

闇が生まれるとき
齋藤紳二助祭

私が通っている牛久の外国人収容所で、先日70人ほどの収容者(収容所発表では30人)がハンストを決行しました。彼らの要求は、収容期間の短縮、仮出所の際の保証金減額、医療事情の改善などでした。

収容されている人たちは、収容がいつまでつづくのか不明のまま、強制的に国に帰される恐怖におびえながら、数ヶ月から 2年以上に及ぶ年月を送らなければなりません。彼らが皆望んでいるのは仮の形ながらとりあえず出所できる「仮放免」の許可です。しかし、仮放免で出所するには、保証金を預ける必要があります。50万円が一般的ですが、中には100万円、150万円を要求される人もいます。彼らにそんなお金はありません。

以前から問題になっている医療体制はほとんど改善されず、収容が長引けば心身に重大な支障が生じます。現に私たちが面会している収容者の中には、体がぼろぼろになってしまった人、精神に異常をきたした人もいます。

ハンストは2週間で終息しました。収容者たちは、要求のかなりの部分が収容所に聞き入れてもらえたと判断して行動を中止しました。しかし、私たちにとって心配だったのは、収容所がその意志を収容者に正しく伝えたかどうかです。実は、収容所側の方針は直接伝えられたわけではなく、ある支援グループの仲介を通してのものだったからです。

私が所属するグループは国会議員の助けを借りて、収容所側の考えを所長に直接確かめる機会をもちました。案の定、収容所側はなんの約束もしていなかったのです。私たちは収容者の誤解を解くために、彼らに収容所側の考えを伝えなければなりません。さもないと、約束が守られていない、として、またハンストが起きる可能性があるからです。

誤解が生じた原因は明らかです。収容所が収容者たちを人間扱いしていないからです。じっくり話し合って解決を図るのでなく、面倒ばかりかける厄介者という意識で向き合うからです。こうして人権の闇が形成されていき、私たちの国は外国から非難の対象とされていきます。この国の施策に人道的な考え方を注ぎ込む方法はないものでしょうか?

教会報 2010年6月号 巻頭言

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