2018年8月

平和の問題に常に関心を
日本カトリック司教協議会会長 髙見三明大司教

(…)いまだ深刻な地域紛争、テロ、核兵器の脅威、難民問題、さまざまな形の差別、経済的格差および摩擦などが世界中の人々の平和を脅かしています。
昨年7月には国連総会で122カ国と地域の賛成多数により核兵器禁止条約が採択されましたが、核兵器の全廃と根絶を目的として起草されたこの国際条約も、今年7月7日現在、バチカン市国を含む11カ国しか批准していないという状況です。
核兵器保有は抑止のために必要であるという考え方が根強いからです。
しかし核兵器保有は、むしろ軍拡競争の原因となり、ひいては経済の軍需産業依存、軍需と政治の癒着を来してしまいます。
抑止とは、武力で平和を維持しようとする試みですから、敵対心、相互不信感、利権の衝突など対立の要因をいっそう深刻化させ、和解、和平、相互理解の基盤を徐々に崩してしまいます。
世界が直面する喫緊の問題(環境、移民・難民、格差や貧困など)は、長年の抑止論と不均衡な経済制度から生まれています。

また、テロ対策や安全保障を理由に言論統制が行われ、インターネット上のサイバー攻撃や差別意識を煽るヘイトスピーチが横行し、スマホ依存症に起因するさまざまな問題も生じています。
メディアは、特定の国や民族や宗教等について否定的な固定観念を作るのではなく、正確な情報を公平に提供し、相互理解を促すべきです。

わたしたちは、人間が神に象られて創造された高貴なものであり、全人類が一つの家族であると教えられています。
また、人類は和解と相互愛によって連帯を構築する使命を神から与えられていることを知っています。
このような信仰と確信に基づいて、愛をもって真実を語り、互いに高め合い、きずなをつくるために情報を役立てるように努めましょう。
また世界特に東アジアの情勢を常に注視し、為政者たちが自国の利益の優先ではなく相互の善益と平和を追求するために徹底した対話を忍耐強く続けることができるよう祈りましょう。

教会報 2018年8月号 巻頭言

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