2021年12月

「ヨセフよ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい。」
御前(みさき)ザビエル

近づいているクリスマスといえば、救い主イエスとその母マリアをすぐ思い浮かべますが、ヨセフを忘れてしまいます。
確かにルカは、「彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、 初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた」(2・6-7)と書いていますが、ヨセフに触れていません。
住民登録をするために、ガリラヤの町ナザレから、ベツレヘムへ上っていく旅の疲れもあったでしょうし、宿屋には彼らの泊まる場所がなかったという不安もあって、きっとヨセフは心の中でいろいろと思い巡らして、赤ん坊の世話を全面的にお母さん、マリアに任せていたのでしょう。

しかし、ヨセフはマリアの淨配(じょうはい)として自分の大事な役割を忠実に果たしました。
彼は婚約者マリアが聖霊によって妊娠したことが明らかになったとき、マリアを困らせまいと考え、ひそかに縁を切ろうと決心しました。
そのとき、主の天使のお告げを受け、「ヨセフよ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい」と言われ、神様からの素晴らしい贈り物としてマリアを迎えました。
ヨセフはこう思ったでしょう。
「マリアよ、あなたを妻として迎え入れます。あなたが救い主の母になるように、『喜びと希望、苦しみと不安』をともにして、あなたを支えます」と。
こうしてヨセフは、マリアを世間の中傷から、またヘロデの手からも守りました。

帰ってきたナザレの家で、マリアは赤ん坊の世話をしますが、ヨセフは成長した少年イエスに大工の仕事のほか、人間として、生きることを教えました。
ヨセフは聖家族の守護者となりました。

お父さんとお母さんはそれぞれ取り換えることのできない役割をもっています。
ヨセフの姿をとおして、父親の使命を感じ取ります。
それはつまり、妻を神からの贈り物として迎えること、お互いに認め合うこと、新しいいのちを育てていくこと、人生のいろいろな危険から家族を力強い愛をもって守ること、です。

現代社会において、危機にさらされている家族が、ヨセフが生きた正しさ、忠実さ、愛の強さに満たされた家族となれますよう、切に願っています。

教会報 2021年12月号 巻頭言

Script logo