2023年10月

聖テレジア(幼いイエスの)おとめ教会博士
中嶋 義晃 神父

浦和教会で久しぶりのテレジアフェスタが行われることもあり、今回は聖テレジアを取り上げます。
テレジアは、フランス、アランソン市に住む、信仰深いマルタン家の末娘として生まれました。
1877年、母の死を機に、父と4人の姉とともにリジューに移ります。
テレジアは、2人の姉たちのいるリジューのカルメル会に入ることを望んだものの、年が若いという理由で入会はすぐには許可されませんでした。

88年4月、彼女の熱い望みがかなえられて入会してからは、すべてを神にゆだね、自分がいかに小さい者であるかを認めながら、祈りの道に励みます。
修道院の生活の中で、彼女は「教会の心、活動の泉である愛」という自分の使命を見つけました。
96年に肺結核が悪化し、苦しみ多い闘病生活での霊的な体験は、彼女をますます神の愛に開かせました。

テレジアはカルメル会の伝統と霊的遺産、とくに改革者アビラの聖テレジア、十字架の聖ヨハネの霊的教えに深く根ざしながら、誰にでも理解できるやさしい表現をもってその霊性を全教会に示しました。
神のいつくしみの愛を悟り、神がすべてのものを自らとの親しい交わり、観想の最高峰へと呼んでいると確信していました。
この無限の愛の招きにどのように応え、身をゆだねたらよいのか、彼女は自分が偉大な徳、大きな業を行うにはあまりにも小さく弱く、貧しいことを自覚していました。
「神へのただ一つの道は、おん父の腕のなかに何の恐れもなくまどろむ幼子の委託」であり、テレジアはそれを「小さい道」と呼び、さまざまなたとえを借りて説明しています。

二つの例を挙げます。
「幼い子が階段を登りたくて、足を上げても最初の一段にも届かない。しかし、繰り返し小さい足を上げ続けていると、それを見て、父自ら降りてきて、わが子を腕に抱え上げてくれる」「うぶ毛の小鳥は太陽を目指して飛ぶことはできない。
しかし、偉大な鷲であるキリストは、自らの翼に乗せて小鳥を三位一体の竈(かまど)へと連れていってくれる」。
このテレジアの 「小さい道」によって、聖性と高い観想はすべての人の手に届くものとなりました。
死に臨んで彼女は言います。
「わたしは死ぬのではありません。いのちに入るのです わたしの使命が始まろうとしています。それはわたしが愛しているように、人々に神を愛させる使命です。人々にわたしの『小さい道』を示す使命が――」。
「神よ、わたしはあなたを愛します」ということばを残し、24歳の若さでこの世を去りました。

院長から記すようにと言われて書いた『自叙伝』は、今日でも世界の多くの人々に読まれています。
また、このほかに、書簡集『幼いイエズスの聖テレーズの手紙』が残されています。
祈りをもって宣教したテレジアは、宣教の保護者といわれています。

教会報 2023年10月号 巻頭言

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